消化器内科
主な消化管疾患
胃・十二指腸潰瘍
消化性潰瘍とも呼ばれます。
胃潰瘍は高齢者に、十二指腸潰瘍は若年者に多く、また男性に多い疾患です。
痛みを伴うことが多いものの、突然の吐血や黒色便、貧血といった症状で発症することもあります。
胃潰瘍の80%、十二指腸潰瘍では90%(慢性胃炎でも40~50%)にヘリコバクター・ピロリという細菌が関わっていることが明らかになりました。
日本人のピロリ菌感染率は高く、40歳以上では40-80%以上です。実際に潰瘍を発症する人は、ピロリ菌感染者全体の2~3%です。
一度潰瘍が生じた人では、除菌をせずに胃薬の内服を中止すると高率に再発し、そのため以前は一生の病気といわれていました。
しかし除菌が成功すると、その再発率は非常に低くなります。
2000年11月よりピロリ菌の除菌療法が保険適用となり、当院でも積極的に診断・治療を行っています。
胃薬(いわゆるプロトンポンプインヒビター)1種類と抗生物質2種類(アモキシシリン1500mg、クラリスロマイシン400mg/800mg)の3剤を1日2回、7日間経口投与します。
除菌率は70-80%ほどです。副作用発現率は約15%。下痢、軟便、味覚異常、アレルギー反応などがあります。
また、除菌が成功した際、胃が元気になり胃酸の分泌が増加するため、逆流性食道炎が10~20%の人にみられます。
薬が原因で潰瘍が生じることも多く、痛み止めや解熱剤として使われる非ステロイド性消炎鎮痛剤、ステロイド剤(プレドニンなど)や抗生物質が代表的ですが、感冒薬でも起こすことがあります。
長期使用の際には気をつけたいものです。
胃食道逆流症
食道炎の有無に関わらず、食道内への胃酸などの胃内容物逆流による症状がでるものを胃食道逆流症(GERD:Gastro-esophageal Reflux Disease)と呼びます。
高齢化(胃酸逆流防止機能の低下、蠕動運動の低下)、肥満(腹腔内圧の上昇)、ピロリ菌の除菌(胃酸分泌増加)などにより患者数が増えています。
胸やけ、胃酸のこみ上げる感じ、胸痛といった症状、時に喘息様症状、朝起床時の咳嗽などの呼吸器症状で受診されることもあります。
内視鏡検査を実施し、逆流に伴う食道の発赤やびらんが認められれば診断できます。
食道裂孔ヘルニアの有無、萎縮性胃炎の程度、ヘリコバクター・ピロリ感染などで、総合的に判定します。
生活習慣の改善(前かがみ、食後すぐに横になることを避ける)、肥満の解消(腹腔内圧の上昇)を心がけます。
食事では脂肪の多い食物・コーヒー・香辛料・アルコール類・タバコなどは胃酸の分泌を高めるので控えましょう。
治療薬としては、胃酸分泌抑制剤、消化管運動機能改善剤、粘膜保護剤などが使われます。
過敏性腸症候群(IBS:Irritable Bowel Syndrome)
以前は過敏性大腸炎、過敏性腸炎ともよばれていましたが、実際には「炎症」はなく、自律神経バランスの崩れなどで生じる疾患として、過敏性腸症候群と呼ばれるようになりました。
ストレスが主要な原因のひとつと考えられており、現代社会を反映してか、患者さんは増加しています。
日本人の10~15%に過敏性腸症候群の症状がみられるといわれています。
通勤、仕事などで、不安や精神的ストレスが加わると自律神経を介してストレスが腸に伝達、腸管の異常運動が生じ、腹痛・便通異常が発生します。
2006年4月に診断基準が改定されました。
腹痛あるいは腹部不快感が最近3ヶ月の中の1ヵ月につき、少なくとも3日以上を占め、下記の2項目以上の特徴を示すもの。
- それらの症状が排便により軽快する。
- 症状の発現が排便頻度の変化を伴う。
- 症状の発現が便性状(外観)の変化を伴う。
仕事が休みの時、症状が軽快することが特徴です。
以下の4つに分類されます。
1)便秘型:腸のぜん動運動低下、腸の異常な収縮運動により起こります。腹痛を伴う便秘が続き、ウサギの糞のようなコロコロとした硬い便が出ます。
硬便または兎糞状便が便形状の25%以上、かつ、軟便または水様便が便形状の25%未満のもの。
2)下痢型:大腸の動きが活発で、ぜん動運動が過度に起こります。血便はなく、また体重の減少もみられません。
食事毎に下痢を発生します。
軟便または水様便が便形状の25%以上、かつ、硬便または兎糞状便が便形状の25%未満のもの。
3)混合型:腹痛を伴う便秘の症状が数日続くと、次に腹痛を伴う下痢の症状が出るといった、便秘と下痢が交互に繰り返されます。
硬便または兎糞状便が便形状の25%以上、かつ、軟便または水様便が便形状の25%以上のもの。
4)分類不能型:上記のいずれにも当てはまらないもの。
この他、ガスがたまる、吐き気、頭痛、発汗、動悸などの症状がみられます。
大腸内視鏡やレントゲン検査をしても、腫瘍、潰瘍、炎症性腸疾患のような病気がないことを確認します。
治療はまずはストレスの原因を断ち切ることになりますが、実際にストレスを除くことは困難も多く、生活改善や食事療法、対症的な薬物治療法などを行います。
主な肝・胆・膵疾患
ウイルス性慢性肝障害(慢性肝炎、肝硬変)
肝障害の原因は多岐にわたりますが、日本で多いのはウイルス性肝炎、脂肪肝です。
肝炎ウイルスは、A型、B型、C型、D型、E型などがありますが、慢性化し、問題となるものはB型・C型肝炎ウイルスです。
例えば肝硬変の原因としてはC型肝炎が60%、B型肝炎が15%を占め(アルコール性15%)、肝がんの原因としてはC型肝炎80%、B型肝炎10%となっています。
慢性肝炎や肝硬変の初期まではほとんど症状がありません。
20-30年の経過で進行して非代償性肝硬変になると初めて腹水、浮腫、消化管出血、黄疸、といった症状がみられます。
肝臓の機能が低下するため、解毒されなかった物質が脳に達して意識障害などの精神症状を起こすものを肝性脳症といい、末期に出現します。
クモ状血管腫、手掌紅斑、女性化乳房などもおこります。
この他、腹壁静脈怒張、食道静脈瘤(*)などがみられますが、いずれも無症状のため、健診などで肝機能異常が見られた際には、一度は採血によるこれらウイルス性肝炎の検査をします。
その後、画像診断として超音波、時にCTなどを行います。
さらにこれらの検査では肝がんの早期発見も同時に行われます。
食道静脈瘤が疑われれば、上部消化管内視鏡検査をします。
診断がつけば、B型・C型肝炎ウイルスそれぞれに対しての治療を行います(後述)が、原因如何により慢性肝炎では肝炎進行の防止(ウルソデオキシコール酸内服や強力ミノファーゲンCの注射、瀉血療法など)を、肝硬変となれば、腹水・浮腫には塩分制限とともにアルブミン製剤や利尿剤の投与を、また肝性脳症には、良質たんぱく質の投与や便通コントロールといった対症療法をします。
また、高率に合併する肝がんの早期発見に努めなければなりません。
C型肝炎ウイルス:主な感染経路は輸血や血液製剤、汚染された注射針(麻薬や覚醒剤の乱用)、入れ墨、医療従事者の針刺し事故、母子間感染などです。現在輸血後肝炎の新規発症はほとんどみられなくなりました。
C型肝炎ウイルスは、日本人の1~1.5%にみられます。
感染後高率に(約60~80%)慢性肝炎に移行します。
C型慢性肝炎に移行後の自然治癒はまれであり、ゆっくりと進行、やがて肝硬変に至り、肝がんに進展します。
自覚症状はほとんどなく、患者の約半数は健診や人間ドック、献血時、あるいは他の病気で療養中に偶然発見され、診断されます。
慢性肝炎では、ウイルスを排除するための根治療法として1年間、週1回の「ペグインターフェロン」の注射と経口抗ウイルス薬「リバビリン」を併用する強力な治療法があります。
65歳くらいまでが対象となりますが、時に70歳を超えても行なうことがあります。
ウイルスを排除することが出来るのは50-80%前後で、ウイルスのタイプや量によって異なります。
インターフェロンの副作用には発熱、食欲不振、血球減少、脱毛、眼底出血、糖尿病の悪化、心臓病の悪化、間質性肺炎、甲状腺機能異常などがあります。
またうつ状態が出現する場合があります。リパビリンの副作用としては貧血があります。その他まれに頭蓋内出血を起こすことがあり、高血圧・糖尿病のある方は相談が必要です。
B型肝炎ウイルス:幼少期以降で感染すると多くの場合、急性肝炎後に治癒(ただし、1%で劇症肝炎という命に関わる事があります)する、一過性感染で終わります。
しかし、幼少期以前に感染すると、ウイルスが排除されず慢性化します。
慢性化症例の主な感染経路は母子間感染です。
B型肝炎ウイルスは日本人の1%程度で、高齢者ほど多くなります。
B型肝炎は自然経過で35歳くらいまでに臨床的治癒へ移行する例が多ものの、活動性のある肝炎が持続する場合には治療が必要になります。
若年者ではインターフェロンが、35歳以降では、経口抗ウイルス薬の長期内服が必要になります。
ただし、経口抗ウイルス薬は耐性ウイルス出現の問題もあり、専門医による処方が必要と考えられます。
また、B型肝炎ウイルス感染では肝炎が落ちついた状況でもがんが生じることがあり、問題なくても年1回の超音波などの画像検査は必須です。
食道静脈瘤:肝硬変に伴い食道の粘膜面を流れる静脈に大量の血液が流れ込むため、食道の静脈が瘤のようになります。無症状ですが、時に食道内腔に破裂し、吐下血といった大出血を起こします。
食道静脈瘤の有無を確認するためには、上部消化管内視鏡検査が必要です。
破裂しそうなサインがあれば、予防的治療を行うため、連携している医療機関に紹介します。
脂肪肝
健常人の肝臓にも含まれる中性脂肪が過度に沈着した場合を脂肪肝といいます。
健診でみつかる肝機能異常の大部分は脂肪肝です。
中年以降の、内臓脂肪蓄積型肥満の男性に多くみられます。
肥満、アルコール(+つまみ)よるエネルギーの過剰摂取、運動不足などが原因です。
脂肪肝は症状がありません。
通常、超音波検査で診断がつきます。
血液検査では、AST (GOT)<ALT (GPT)の上昇がみられます(アルコールの場合はAST>ALT、γ-GTPが高値となります)。
肥満にならないよう生活習慣改善する事が治療です。
摂食、禁酒、運動で体重をコントロールします。
非アルコール性脂肪性肝炎(Non-alcoholic steatohepatitis; NASH):飲酒をしないにも関わらず、アルコール性肝障害と同じような肝臓組織を示す病気です。
近年、新しい生活習慣病として注目されています。
NASH患者は肥満、糖尿病、高脂血症を有する中高年に多く、脂肪肝といわれている集団の8%程度がNASHと考えられるようになってきており、10年で10%が肝硬変に至ると言われています。
日本人の頻度は1%程度、100万人と推定されています。
飲酒歴(アルコール摂取量20g/日以下)、糖尿病、生活歴などを調べ、本症を疑った場合は、肝生検を行ないます。
アルコール性肝障害と同じ組織像をみた場合、確定診断となります。
治療は食事と運動療法です。
内服薬としては、インスリン抵抗性改善薬、ビタミン剤、ウルソデオキシコール酸などの肝臓病治療薬が使われます。
胆石
胆石とは、肝臓でつくられる胆汁をためる胆嚢の中に結石ができる病気です。
胆嚢内に濃縮した胆汁成分が変化して石(多くがコレステロール石)ができます。
40-50歳代で4%前後、70歳代 では10-20%の人が胆石をもっているものと推測され、肥満のある女性に多く認められます。
上腹部から右脇腹にかけて突然激痛が襲う発作が特徴です。これを胆石症と呼びます。
胆汁の流れ道である胆道が結石によって閉塞し、胆汁が堰き止められれば黄疸がおこります。
ここに感染が生じると、重篤になりやすく、緊急の処置を必要とします。
超音波検査などの画像診断が決め手になります。
無症状の胆石の場合は経過観察し、急いで治療する必要はありません。
胆嚢がんの危険因子とされておりますが、年1回の経過観察で十分です。
胆石を溶かす飲み薬もあります。
痛みや炎症症状が強い場合は手術により胆石の入っている胆嚢ごと摘出する手術が必要になります。
消化器がん
日本のがん-2003年統計より (男性/女性)
胃がん―2位/1位
大腸がん(結腸がん―4位/3位、直腸がん―7位/9位)
食道がん―6位/10位以下
肝がん―3位/4位
膵がん―5位/6位
胆道がん―9位/7位
消化器領域はがんが多く、早期発見・早期診断により負担の軽い治療、治癒が可能となってきました。
そこで、以下に特徴を並べてみます。
当院では、採血、便潜血反応、レントゲン検査(胃・大腸)、上部消化管内視鏡検査(胃)や超音波検査(肝臓・胆道・膵臓)などで、積極的に早期発見に努めています。
また発見の際にはしかるべき医療機関に紹介します。
胃がん
男性のがん死亡率の中では肺がんに次いで2位ですが、女性では1位です。
総数は2005年には男性で32,643人、女性で17,668人です。全がんの17%を占めています。
ヘリコバクター・ピロリ菌の感染、萎縮性胃炎、高齢、男性、喫煙、塩分の多い食べ物などが胃がんの危険因子です。
早期胃がんでは殆んど症状がありません。
検診で胃透視・内視鏡検査を受けることにより、早期発見が出来るようになりました。
胃がんの治療の基本は手術ですが、粘膜に留まる早期がんでは、内視鏡下粘膜切除術で簡単に済ますことができるようになりました。
早期であれば5年生存率はほぼ100%です。
大腸がん
2003年度の統計によると大腸がんの死亡者数は38,909人(結腸がん25,850人、直腸がん13,059人)でした。
女性では、早期に胃がんを追い越し死亡率もトップになるだろうと言われています。
現在全がんの12%を占めています。
大腸のポリープの既往、家族歴、長期の炎症などが危険因子とされます。
大腸がんは発生する部位から、結腸がんと直腸がんに分かれますが、40歳代から発生し、50歳以降に罹患率が上昇します。
ごく最近になり、大腸がん検診(便潜血検査)を受けた人は、受けなかった人より大腸がんによる死亡率が約70%も低かったとの調査結果が発表されています。
早期がんで見つかる割合が高いため、と考えられます。
まずは脂肪やたんぱく質の摂り過ぎやアルコールを控えることが大切です。
繊維質を多く摂ることは、大腸がんの予防になることが動物実験で証明されています。
便潜血反応、大腸レントゲン検査で陽性の際には、大腸内視鏡検査(大腸ファイバー)を行い、切除して組織をとり病理検査によりがんかどうかを診断します。
胃がんと同じく早期であれば内視鏡下粘膜切除術が可能で、5年生存率は95%です。
食道がん
2005年のデータでは食道がんの死亡者は総数で11,182人、男性で9,465人、女性で1,717人と男性に多く認め、全がんの3.4%を占めます。
タバコやアルコール、熱い飲み物などが危険因子です。
他の消化管がんと同様、早期であれば、積極的に内視鏡下粘膜切除術が行われるようになってきました。
肝がん
死亡者は総数で3万人を超え、全がんの11.6%を占めます。
そのほとんどはC型・B型肝炎ウイルスの感染によっておこります。
C型肝炎ウイルスでは感染してから慢性肝炎、肝硬変を経て20~30年で肝がんが発生します。
一方B型肝炎ウイルス感染では肝炎が落ちついた状況でもがんが生じることがまれにあります。
がんがかなり進行しないと症状はでません。
そのため、C型・B型肝炎ウイルスが判明した際には、定期的な検査が必要となります。
肝がんの早期発見に有効な検査は腹部超音波検査です。
肝がんが疑われる場合には、さらにCTなどの画像で診断することが有効です。
採血項目の腫瘍マーカー(α-フェトプロテイン(AFP)、PIVKA-II)も有効な検査法です。
膵がん
からだの奥にあるため発見が困難で、発見されても治療困難ながんの一つです。
全がんの6.4%を占めます。
危険因子はいまだ明らかではありません。
早期の膵がんでは殆んど症状はありませんが、時におなかや背中が重苦しい、痛い、食欲不振、体重減少などがみられます。
糖尿病との関係も重要で、糖尿病から膵臓がんになることはありませんが、経過観察中の糖尿病が急に悪くなってきた場合は、膵臓がんを疑ってみる必要があります。超音波検査やCTで異常をみつけます。
腫瘍マーカー(CEA、CA19-9、DUPAN-2、Span1)も有効な検査法です。
最近、膵臓の嚢胞性疾患との関連がいわれてきています。
胆道がん
胆道がんとは肝臓で作られた胆汁が十二指腸まで排出されるまでの通り道(=胆道)にできるがんの総称です。
胆管がんと胆嚢がんに分けられます。
胆嚢がんは女性に比較的多く発生します。
また胆嚢がんの患者さんの多くは胆石をもっています。
胆石による慢性的な刺激が癌化に関連すると考えられています。
多くの場合自覚症状はみられません。
胆管がんの場合には比較的初期の段階から黄疸が現れることがあります。
黄疸時には身体のかゆみや尿の色が濃くなったり、便が白くなります。腹部超音波検査が有効な検査となります。






